院長

私はこの東海市で生まれ、育ちました。 医師となり地元の地域医療に貢献させていただいて17年、この地域の状況も少しずつ変化しています。

なぜ透析室なのか

医療は日々進歩しています。
医師としてより良い医療を提供しようと考えると、日常の診療のみならず、進歩し続ける医療に常に関心を持ち、自身の診療知識や技術をアップデートしていかなければなりません。
中でも透析医療の進歩には目覚ましいものがあります。
その理由の一つは、医療機器の進歩です。

みなさんもご存じの通り、パソコンやスマホは大変な速度で進歩していますが、それは透析機器も同様です。
そのスピードは、(誤解無く伝われば良いのですが)専門の医師や施設の対応が追いつかない程とも言えるでしょうか。
専門の医師の先生方は「腎臓疾患の専門」であり透析医療のみを行っているわけではありません。また、その医療機関に新たな治療法に対応できる機器が導入されていない場合、その医療に実際に携わることも難しくなります。
特に透析医療は、医療機器を日々開発している企業の方、工学的・医療的な面からそれらの機械を適切に操作できるスタッフ、そして患者さんの状態を判断できる医師、そのすべてが連携して行わなければなりません。

また、透析を受けている患者さんの場合、透析医療だけではなく、自身の状態や他の疾患の治療、生活背景も大きく影響を与えます。
通院手段としての交通公共機関が十分とは言えないこの地域において、高齢になり自家用車が運転できなくなることは、大きな負担として患者さんご自身とご家族に重くのしかかってきます。
日頃の診療の中でも「今後通院が難しくなるのでは・・」と心配されている患者さんの不安をひしひしと感じます。
私自身もそれなりに年を重ねておりますので、患者さん一人ひとりのご自宅へ出向くのには限界があります。

近年介護や保育の面では、異業種の参入が認められ急激に進みましたが、なんとかこの東海市で、急激に進み、さらに多様化する現代の高齢社会において、ご家庭や患者さんそれぞれに寄り添う医療ができないかと長年考え、今のこの地域で必要とされ、且つ医師でしかできない施設、それは透析室だという結論に至りました。
大きな施設ではないため、たくさんの方々に・・ということはできませんが、日頃の診療から「小規模だからこそできることがある」と確信しています。

当院だからできること

実は私は血液内科が専門で、少なからず透析医療にも関わってまいりました。とは言っても日々進歩する透析医療に精通していたわけではもちろんありません。
この度の透析室開設にあたり、最前線で透析医療を行っている総合病院の先生方に面会させていただきました。開業から17年という年月、この地域で真摯な医療連携を心掛けてきたことが届いていたのか、私のこの地元での新たな地域医療への熱い想いを、お話しさせていただいたどの総合病院さまも受け止めてくださいました。
その中でご厚意により2ヶ月ほど、近くの大手総合病院の透析施設で研修を受けさせていただくことができました。(関係各位の方々、その節はありがとうございます)

また、腎臓内科の中でも特に透析に精通された「日本透析医学会専門医」の先生方に、当施設の透析医療を全面的にバックアップしていただけることになりました。("いち"クリニックの透析室ですのに、本当に感謝しかありません)

透析医療にはトラブルがつきものです。
透析を行うためのシャントと呼ばれる血管は、狭くなったり詰まってしまったりすることがあり、その場合は閉塞を素早く改善する必要があります。
軽い場合では血管内にカテーテルをいれてバルーンを拡げて対応したり、一時的に別のルートを作って透析を行ったり、改めて手術を行って血管を作り替えたり、多様な状況への対応が不可欠です。
他の疾患等さまざまな理由で外来での通院が難しくなった場合には、入院して透析と他疾患の継続治療も必要となります。
一つの施設では困難なあらゆるケースにおいて、近隣の複数の総合病院に緊急対応していただけるよう、多岐にわたって医療連携の体制を整えることができました。

最近は男女関係なく働く時代になり、この地域でも共働きの家庭が増えました。介護への家庭の事情も変わってきています。必ず家に人が居るというご家庭も少なくなり、独居の方も増えています。病院への送り迎えなど、ちょっとしたことが困難な時代になりました。
透析医療を受けている方も他の患者さんと同様、小さな変化が日常的に起こります。一時的にご自身での移動が思わしくなくなったり、家族の都合がつかなかったり・・。
そんな小さな心配事に、ご本人やご家族と気軽に相談し合えるような、身近な「新しい透析室」を目指しています。
「今は通院に問題ないけれど今後歩行などおぼつかなくなったら・・」という未来への不安などもご相談ください。
スタッフの人数や対応できる時間帯などから、すべてを実現できるわけではもちろんありませんが、耳を傾けることが大切だと思っています。
透析にかかる時間はとても長く、週に3回、4~5時間ほど滞在する場所です。
より快適に過ごせるように、「一緒に過ごす場所」でありたいと思いますし、そのために常に変化していきたいと考えています。

また、既に透析を行っている方が近隣の介護施設(老健・特養・老人ホーム等)に入所される場合、その施設への送迎も可能です。施設との連携を図りながら行っていきますので、まずはご相談ください。現在、近隣の関連施設との連携も着々と進めています。

医療・介護との連携、医療体制・医療設備の充実、長時間を不安なく過ごしていただくための取り組みなど、患者さんに寄り添いながら、可能な限り患者さんに寄り添う医療を行っていきます。

透析医療を現在行っている患者さまへ

透析医療は日々進歩しており、膜や透析方法も多様化しています。
すべての医療に言えることですが、現在行っている医療が最適とは限りません。(そのために医師は日々情報収集を行い、研鑽を続けています)
従来のHDが最適な方もいれば、I-HDF、オンラインHDFなど、実はさらに適した透析方法があるかもしれません。

これから変化を続ける透析医療に合わせ、私たちも常に進んでいく医療を目指したいと思っています。
私が透析医療の研修を重ねていく中で、特に機器の開発速度が著しい透析分野では、専門の医師たちの現場でも「施設としてまだ機器更新の問題などもあり対応し切れていない部分もある」との声を聞きました。 ご自身のための透析医療、どうか色んな情報に目を向け、色んな声に耳を傾けて下さい。

医療スタッフ、そして医療に関わるすべての会社のかたへ

「患者さんにとってより良い医療を行えるクリニックをつくる」こと、そして常にそんなクリニックでいられるためには、私ひとりでは不可能だといつも思っています。
私の患者さんへの想いをスタッフに伝え、スタッフが一緒に作り上げてくれないと、良いクリニックはできません。現在の私が患者さんのことだけを考えて日々の診療ができるのも、本当に良いスタッフに恵まれているからに他なりません。感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、今までは表立って話すことはありませんでしたが、医療機器や医療材料の会社さま、お薬を開発される方々も、真摯な医療を患者さんへ行うための同じチームであると思っています。
日頃から日々進む医療情報を持ってきてくださる、そういった多種の企業の方々には、本当に感謝しかありません。
日々の診療やクリニックの雑務に忙殺され、新しい医療情報を自身だけで獲得することは、なんと難しいことか。休診日に講演会や研修会に出席するだけでは、従来からの診療や現在のスタンダードな医療を知ることだけとなってしまいます。
未だに交流もある大学病院の医師たちと同じように、専門分野のみならず内科領域全般の新しい医療について真っ先に知ることをできているのは、こういった医療関係の会社の方々のお仕事に支えられているからです。地方の一(いち)クリニックにわざわざ足を運んで情報提供をしていただける、本当にありがたいです。
ご来訪の際にはお一人おひとりの面会時間をしっかりとりたいと思っていますので、時期によっては先の日にちになってしまうかもしれませんが、お電話等でご予約をお取りいただければと思います。

介護施設の方・ケアマネージャーの皆様へ

透析を行っている方が施設へ入所されることになった、若しくは現在入所されている方が透析医療を行うことになるといった場合、施設さまの玄関先への送迎(車いす可)も可能です。十分な打ち合わせの上で、施設さまと利用者さまの双方になるべく負担の無いよう、連携を図りたいと思っています。

また、今はなんとか歩行できているものの、今後QOLの悪化が心配されている方もいらっしゃると思います。当院にて透析医療を行っているなかで通院透析が不可能となった場合や、他疾患等により入院治療が必要となった場合など、その際の受け入れ先医療機関とも緊密に連携しています。(すべての患者さんのご希望にお応えできないこともございます)
※透析患者さまの入院・入所施設のご紹介は、当院にて通院透析されている患者さんに限らせていただいております。

連携をご希望の施設さま、透析患者さんをご担当のケアマネージャーさま、話だけ聞きたいということでも構いません。お気軽にご連絡ください。
施設連携担当:事務長 桑原

最後に

この度、透析医療に限りですが、現場の第一線におられる医師の方々とお話しする機会がありました。
「医師になって26年ですか。クリニックも長年やってみえて、何と言うか、医療にまっすぐな気持ちのまま続けてきてみえるんですね、少し驚きだ。応援したくなったよ」
とお話しいただいたこともありました。
青臭い話を続けても、このような有り難いお言葉をいただけると、
一見日々の診療に追われ、そして慣れて、ルーティンをこなしているように見えても、
この機会にお話しをしていただいた院長先生や各科部長の先生方の胸の中には、やはり真面目な医師としての熱意は消えていないのだと感じました。

医師になって26年、地元で医療をはじめて17年、東海市より地域医療貢献の賞状も頂きましたが、本当にあっという間に年月がたってしまったことが驚きでもあり、この地域で生まれ育った医師として、これからも、そしてさらに永く、地域医療への貢献をつないでいけるクリニックと施設の構築を目指して、ここから新たに始めていきたいと思います。
地域の方々、医療関係者の方々、ご賛同いただいた皆様、熱い想いのバックアップもこのまま継続をお願いいたします。

また、透析患者さんは、いかなる状況であっても治療を続けなければならない、身体的・精神的に大きな拘束感があるものです。透析時間中、同じ時間を一緒にすごさせていただく中で、ささいな日常の会話など人間同士としての関係を築けたらと思っています。
利用される皆様に、院長として一つお願いもございます。
医療スタッフも大事な私のスタッフ、そして通院される患者さん全員のためにも大切なスタッフです。
お互いに寄り添いながら、お互いの信頼関係の中でつくるあたたかで気持ち良い透析室を目指しています。当院のスタッフは皆心優しいです。どうぞやさしい会話をお願いいたします。